第1回 明晃印刷様 第5章「活版印刷でつながる人」

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第1回 明晃印刷様 髙崎健治社長

Paper ペーパー(Printing and person 印刷と人)今回からはじまります「ペーパー」。「印刷と人」のストーリーです。これから毎回、印刷に関わる人をさまざまな切り口で紹介していきます。

今回も創業69年目を迎える大阪の活版印刷会社 明晃印刷株式会社 髙崎健治社長です。なお、今回第五章最終話となります。活版印刷に始まりさまざまな事業を経験されてきた髙崎社長がいよいよ親から会社を引き継ぐことになります。とはいえ普通とはちょっと違うところも。新しいカタチの活版印刷を模索し始めます。

BS-TBS_こころめぐり逢い

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第5章「活版印刷でつながる人」

あるとき、親父が「会社を閉めようおもてんねんっ」て言いだしてきて。「もうデジタルに押されて得意先も無くなってきてるし機械も古くなってきているし」と。

モトヤ→それはいつぐらいの話ですか。

12年ぐらい前ですかね。

モトヤ→その時の仕事は主としては名刺が多かったんですか。

伝票、名刺、封筒です。ほとんど伝票ですよ。活版でガッチャンガッチャン刷る伝票です。親父は「うちはこの先良くないやろから、お前はお前で40そこそこやねんから、子供もいてるし、自分は自分で食べていくようなことせなあかんで」と言われました。まぁ、ぼくも「次は何しようかなぁ」と思っていた時期だったんですけど。

モトヤ→そのまま継ごうとは思わなかったんですか?

「いやぁ~継ぐにしてもこの先はもう無いなぁ」と思いました。今から記念誌で盛り返すことを考えても、設備投資が必要になるので悩みました。「継ぐか」「継がないか」どうしようかと考えていた時にNHKの番組にヒントをもらいました。NYの活版印刷のおじいちゃんが引退をするのだけど、その場所を新しいデザイナーさんに貸し出すというのを見ました。「まぁ、うちもボロボロの古い会社やけど、新しい子が来るにはどうしたらいいかなぁ」と考えてみました。

ふと自分のところの名刺の値段を見たときにびっくりしました。100枚で活字組んで名刺にして、600円とか800円だったんです。その時東京では少しずつ活版ブームになって来ていたんですよ。値段を見たら100枚で3万円ぐらいでした。おしゃれな名刺でした。なんでこんな差があるんやろと思いました。こっちはちゃんと活字まで組んでやって600円、800円。向こうは樹脂版で2万とか3万とってるから。

それで東京のそういうところへ見に行きだしました。それやったら大阪でなんか活版をしかけたら面白いかもしれんといって作ったのが関西活版クラブです。大阪の活版印刷をやっている人の2代目3代目を集めました。一番最初はブリーゼブリーゼで活版印刷のイベントをやりました。次は東急ハンズが大丸にやって来るというので東急ハンズに営業をかけてというようなことをしながらメディア(テレビ、新聞・雑誌等)にでるようになりました。

 

ラジオ出演

ラジオ出演

そうしているうちにだんだん活版印刷ブームになっていき、活版印刷というものが見直されていくようになりました。その時問い合わせで多かったのが、廃業の電話でした。「君、テレビでみたけど、うちにある機械持って帰ってくれへんか。ただでええから」というような電話が6件か7件ありました。奈良とか京都とかです。大きな機械を持ったまま閉鎖してニッチもサッチも行かない状態になっている状況でした。それで見に行ったら、使えるけど眠ったまま、つまり宝物のような状態でした。

「お金は払われへんけどただであげるわ」という人が多かったです。かたやイベントをやっているうちに若い子が活版印刷をやりたいと言い出しました。桜ノ宮活版倉庫とか山添さんとかに機械を入れました。青森から九州、沖縄まで機械を入れました。それで日本全国にいろんな活版印刷所ができました。

しかし、未だに活版印刷所は自分のところで値段をつけられないところが多いです。80%、90%は下請けを地道にコツコツとやっているところが多いです。表には出てこないです。数少ない発信力のあるところはSNSを使ったりしているとこもあります。私も大きな仕事を受けた場合はそういった活版印刷所に下請けに出しています。

 

活版印刷のアジアの精鋭

活版印刷のアジアの精鋭

あまり、人に任せてしまうと面白くなくなるんです。何か今この状態でいい感じの量の仕事が入ってきてるんです。そして大きな仕事は連休とか盆を利用してさせていただくという感じです。明日も物凄く細かい絵を描くデザイナーがいるのでそれを版にして、知り合いの活版印刷の社長と実験をすることになってるんです。会社をあげて協力してくれるんです。

モトヤ→これまでいろいろとお聞きしてきましたが、そういう事業展開をしている活版印刷会社ってなかなかありませんね。

あぁ、僕みたいな人はいないでしょうね。僕は活版をこう(主観的に)見てないんですよ。活版はどう見られるかなと(客観的に)ビジネス目線で見ています。

モトヤ→ずうっと大阪にいて家業継承でそのままやってきた人だったらそうはなってないかも知れませんね。

ならないでしょうね。もともとどっぷり浸かってないですよ。今でも僕は活版どっぷりが好きじゃないし。常にいろんなことをやろうやろうと思ってるんで。3年ぐらい前ですかね。今は東京に行ってしまった〇〇という子と一緒に事業をしてたんですけど、その時に僕がまた活版印刷をやめようとしたので「そんなんで(活版印刷を)辞めるんやったらまた同じことやで」とごちゃごちゃ言われたんです。

そこで僕は「そんならつづけたるわっ」て言って今続けてるんです。そうしているうちにSNSを始めました。するとうまく軌道に乗りだしました。今はあんまりお金にも興味はないし、バリバリ働くことにも興味がないです。銀行の借り入れもないし。決済も全部キャッシュなのでいつでも終われる。追われてないんです。あまり仕事仕事ってしてないです。社員は一切雇わないです。今7人ぐらいいてますけど全部フリーランスの人です。製作スタッフが必要な時には今はSNSでなんぼでも人はいるので。

モトヤ→社長今は携帯のSNSもありますけど、PCのリモートアプリを使って商談や打合せなどしないのですか。

あぁZOOMとかしないですね。PCですけど、DMを使ってますね。インスタを見ていてこの子できそうだなと思ったらこちらから声を掛けます。そしてそれは相手が北海道でも沖縄でもできますので。デザイナーもいっぱいいてるので。それで作ったのがここ最近ですとアマビエの活版印刷ですね。またそれがSNSで拡散されて。そういうプラスの広がり、ビジネスの仕掛けが好きなんですよ。

髙崎社長の視線は活版印刷を通じ最新技術と若い人たちとで創る多様化する未来へと向けられているようです。
 

活版倶楽部のデザイナーたち

活版倶楽部のデザイナーたち

おわり

 

 



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