
~シリーズ:生産性の向上~
低温リスクを考える:静電気の除去⇒放射式除電装置
急激な気温の低下で、ドアノブに触った時のあのバチッとくる嫌な痛み⇒静電気の季節がやってきました。この静電気は冬場の製造業では永遠の課題で、印刷現場でも毎年のように静電気による給排紙のトラブルで稼働速度が下がり、チョコ停(動いてはすぐに止まる:ちょこっと停止)で、生産性が低下してお困りの先が多いです。
そこで、今回はこの厄介な静電気のトラブル箇所に、ピンポイントでお役に立てる『放射式除電装置』をご紹介します。※En-Forum:No.58で静電気の性質と湿度管理を取り上げていますので、ご参照ください
除電装置は数多くの種類が発売されていますが、どれも除電方式は「イオナイザー」と呼ばれるプラスとマイナスのイオンを電極から発生させて、圧縮エアや送風ファンで送り出す方式で、イオンが帯電している偏った電位状態の箇所に当たり、+と-が引き合って中和することで除電します。
したがって、この方式では飛ばしたイオンが確実に帯電部分に当たらないと効果が出ないため、出入り口の開け閉めや換気や空気の流れ、風の影響を受けてイオナイザーを設置しても、ほとんど効果が出ていないという事例が数多く見られます。さらに、イオナイザー式はイオンを大量に発生させるために、電極針に高出力の電力が必要(150W~200W)となり、火花放電でオゾンが発生⇒電極針の発塵と呼ばれる酸化現象で、イオンの発生能力が下がっていきます。
こうした従来のイオナイザー方式とは異なる、新発想の除電方式「放射式除電装置:バータイプ」が登場しました。この方式は特殊な電源装置で2~5W程度の微量な電気を電気力線(でんきりきせん)に変化させて、+から-方向へ無風で放射状に飛ばし除電する方式です。この放射された電気力線は空気の分子とぶつかり、そこでイオン化されるため、対象物の帯電部分を取り囲むようにイオンが発生して除電できるしくみです。
この放射状の最大距離は約3m先まで届き、取り囲むように放射する性質から、対象物の裏側まで除電が可能です。※最も効果のある距離は15~20cmです。
この方式は高出力の火花放電がないため、オゾンが発生せず、放電針の酸化や周辺の機器に影響を及ぼさず、メンテナンスが簡易的で安心です。100V電源で2~5Wの超省電力であることから、様々な機器に取り付けられて効果を発揮しています。
しかし、難しい点もあり、静電気が発生している箇所の特定と効果的な設置場所の選定が不可欠になります。静電気の発生箇所が特定できない場合、発生源に放射状の電気力線が届かず除電ができなかったり、除電してもすぐにまた別の箇所で静電気が発生したりする場合があります。また、設置場所によっては放射状の電気力線が金属製の遮蔽物で遮断される場合もあり、設置をご希望の先には詳しいヒアリングと現場での調査をお願いしています。
従来のイオナイザーや除電グッズで効果が出ず、静電気対策でお困りの先があれば、モトヤ担当者までお声がけください。