
~シリーズ:法令の把握と遵守~
環境法令を考える:労働安全衛生法「濃度基準値設定物質③」
「En-Forum」をご愛読いただき、ありがとうございます。いつも皆様からのお問い合わせやメーカー様からの情報が環境改善のヒントに繋がっています。今後もそういったお声を丁寧に拾い集めて、なるべく多くの方へお伝えできたらと思います。本年も引き続きよろしくお願いします。
さて、前回は労安法の改正で、運用を開始した「濃度基準値設定物質」のIPA代替アルコールの『t-ブタノール』を取り上げました。そこで、第二種有機溶剤:IPAの代替で有機則:非該当のt-ブタノールが重宝されてきましたが、許容濃度:このばく露濃度以下であれば、ほぼ健康障害は起こらないという線引きでは、t-ブタノール:20ppm/IPA:400ppmから、t-ブタノールの方が圧倒的に毒性は高い事が分かったため、今回はこのt-ブタノールからの改善を考えます。そこで、IPA代替アルコールは以下の3つがあります。
・TBA:ターシャリーブタノール
・NPA:ノルマルプロピルアルコール
・EOH:エタノール

この中で、前述の通り濃度基準値が20ppmのTBAは湿し水添加剤として自動添加する場合、添加率に関わらず、推定ばく露濃度は50~500ppm(全体換気装置の環境下)となり超過するため、確認測定が必要です。
これは個人サンプラーを装着して作業を行い、それを回収して測定する個人ばく露測定で、20ppmを超えると濃度基準値以下に抑える「ばく露低減措置」が義務付けられており、具体的には換気設備に「局所排気装置」の設置や常に防毒マスクを着用等、すぐに実行が難しい対策もありますが、実際はTBAを他のアルコール製品へ変更するという最も現実的な対策を余儀なくされます。
さらに、コスト面でも原材料の大幅な高騰による価格改定の連続で、もはやTBAは最も安いIPA代替アルコールとは言えない状況です。そうした理由からTBA以外の代替アルコールを検討する動きが活発となっています。
そこで、切り替え候補となる「NPA」と「EOH」は、どちらも有機則:非該当で濃度基準値設定物質ではない代替アルコールですが、印刷品質の安定性まで考えると、TBAと同じ条件で運用可能なのはNPAです。
その理由は、湿し水用のアルコール自動添加装置が、IPAを添加した際の「表面張力」で添加するしくみであり、IPAとNPAは化学式が全く一緒(C3H8O)で、構造が少しだけ異なる構造異性体なので、IPA99%品とNPA99%品は互換が可能であり、IPA99%品と互換可能なTBA85%品とも互換が可能な関係です。
ちなみにNPAの毒性はIPAよりも低毒性で、EOHよりも毒性は強いという事が分かっていますが濃度基準値が無い分、高添加率での運用は避けた方が良いです。
一方、EOHはエタノール製剤として主に消毒用途で、食品工場や飲食店の衛生管理用です。単価的にはTBAやNPAよりも安いように見えますが、これを湿し水の自動添加装置で運用する場合はTBAと比較して添加率を1.5~1.8倍ほどに増加しないと、似たような効果は得られないため、実際にはコストが大幅に上がる運用となります。さらに、TBAとEOHでは揮発速度も違うため、添加後に時間経過でアルコールが抜けていき、再び添加されるまでに品質がブレたり、汚れが発生したりする可能性があります。
いずれにしても、湿し水の環境は印刷品質の要となります。現在のアルコールの運用状況をよくご確認いただき、モトヤへご相談ください。
⇒次号へ続く













