環境法令を考える:労働安全衛生法「濃度基準値設定物質②」

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~シリーズ:法令の把握と遵守~

環境法令を考える:労働安全衛生法「濃度基準値設定物質②」

前回は労働安全衛生法の改正により、2025年10月1日~濃度基準値設定物質:112物質の中で、印刷関連の約11種類から、墨インキの顔料:カーボンブラックの影響を取り上げました。今回は残り10種類の運用について、考えたいと思います。

※印刷に関連すると思われる残り10種類は以下の通り

物質名

CAS

用途

基準値:8時間

ジアセトンアルコール

123-42-2

UV洗浄剤

20ppm

ジエチレングリコール

モノブチルエーテル

112-34-5

UV洗浄剤

60mg/m³⇒8.9ppm

シクロヘキサン

110-82-7

速乾性洗浄剤

100ppm

トリエタノールアミン

102-71-6

色替え用洗浄剤

手洗い石鹼

1mg/m³⇒0.16ppm

トリメチルベンゼン

25551-13-7

石油系溶剤

有機則:第三種

10ppm

ノナン

111-84-2

石油系溶剤

有機則:非該当

200ppm

-ブタノール

75-65-0

IPA代替アルコール

20ppm

プロピレングリコール

モノメチルエーテル

107-98-2

UV洗浄剤

H液、水棒洗浄剤

50ppm

ノルマルヘプタン

142-82-5

速乾性洗浄剤

500ppm

りん酸

7664-38-2

プレートクリーナー

親水化処理剤

1mg/m³⇒0.25ppm

 

この10種類の中で、8種類は洗浄剤の成分で、もう1種類はりん酸:pH調整剤です。これらはUV洗浄剤や石油系の各種洗浄剤、親水化処理剤等に含まれており、今お使いの製品に上記の成分が入っているかは、製品のSDS:安全データシート「3.組成及び成分情報」で、物質名やCAS:化学物資識別番号等と製品中にどれぐらいの割合で入っているかも、含有率から確認できます。

ただし、上記の成分が該当すれば、直ちに別の製品へ置き換えという対応ではなく、現在の使用条件によっては濃度基準値以下での運用が可能なため、シミュレーションをする必要があります。この方法については、次号以降で取り上げたいと思います。

そして、残りの1種類がIPA代替アルコールの『t-ブタノール』です。これは、印刷の湿し水に添加するアルコール製品で、もし使用されている場合は、今回の改正で作業現場の濃度基準値を20ppm以下に抑える運用が義務付けられたため、その基準値の低さと自動で添加して揮発するという特殊な使用方法を考えると、使い続けるには現在の使用条件に関わらず、アルコールの運用方法を再検討する必要があります。

では、なぜこのt-ブタノールが、湿し水の添加剤として印刷業界で長く使用されてきたかというと、オフセット印刷の品質を左右する湿し水に特別な能力を付与する添加剤として「IPA:イソプロピルアルコール」が古くから使用されていました。※湿し水添加剤:アルコールの働きについてはエンフォーラムNo.41を参照

このIPAは労働安全衛生法の第二種有機溶剤に該当するため、有機溶剤用の特殊健康診断と作業環境測定を半年ごとに実施や局所排気装置の設置という厳しい義務が課されており、それらの運用が難しい先では有機則:非該当で、同等の性能を有する添加剤の需要があり、安価なt-ブタノール含有品がIPA代替アルコールとして定着しました。


しかし、このt-ブタノールは労働安全衛生法の有機則:非該当のため、第二種有機溶剤のIPAよりも安全であると思われがちですが、実際には公益社団法人:日本産業衛生学会の許容濃度では、40時間/週の作業で、ほとんど影響が出ないとされる限界値がIPA:400ppmで、t-ブタノール:20ppm(濃度基準値)の数値で比較すると、IPAよりもはるかにt-ブタノールの方が毒性は強いという事が分かっています。

⇒次号へ続く

 

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