
~シリーズ:法令の把握と遵守~
環境法令を考える:労働安全衛生法「濃度基準値設定物質④」
労働安全衛生法の改正でスタートした「濃度基準値設定物質」について、前回は湿し水添加剤(IPA代替アルコール)のような、取扱量に関わらず基準値を超えてしまう特殊なものがありましたが、今回は使用条件によって基準値を超える・超えないが決まる一般的なものに焦点を当てて、運用方法を考えます。
そこで、濃度基準値設定物質に該当する179物質(2026年2月時点)の中で、印刷業界に関連する成分という観点から、既に取り上げた「カーボンブラック」「t-ブタノール」を省いて候補を調べると、以下の9種類があります。これらは主に洗浄剤等に含まれている成分で、濃度基準値という40時間/週(8時間/日×5日)の作業中に吸い込んでも、ほぼ健康障害は起こらない平均濃度の線引きがあり、この基準値以下での運用が労働安全衛生法で義務付けられているため、現在の現場環境が設定された基準値以下での運用になっているかを確認する必要があります。
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物質名 |
CAS |
用途 |
基準値:8時間 |
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ジアセトンアルコール |
123-42-2 |
UV洗浄剤 |
20ppm |
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ジエチレングリコール モノブチルエーテル |
112-34-5 |
UV洗浄剤 |
60mg/m3⇒8.9ppm |
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シクロヘキサン |
110-82-7 |
速乾性洗浄剤 |
100ppm |
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トリエタノールアミン |
102-71-6 |
色替え用洗浄剤 手洗い石鹼 |
1mg/m3⇒0.16ppm |
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トリメチルベンゼン |
25551-13-7 |
石油系溶剤 有機則:第三種 |
10ppm |
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ノナン |
111-84-2 |
石油系溶剤 有機則:非該当 |
200ppm |
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プロピレングリコール モノメチルエーテル |
107-98-2 |
UV洗浄剤 H液、水棒洗浄剤 |
50ppm |
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ノルマルヘプタン |
142-82-5 |
速乾性洗浄剤 |
500ppm |
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りん酸 |
7664-38-2 |
プレートクリーナー 親水化処理剤 |
1mg/m3⇒0.25ppm |
※上記以外にも該当成分の可能性はあります。
厚労省:職場のあんぜんサイト「●濃度基準値設定物質等の一覧(179物質)」で確認が可能。
(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc11.html)
では、これらを確認するためにまずは、現在使用している化学物質(液体)の中に、該当成分の含有調査をします。調査には製品のSDS:安全データシートが必要になるので、製品の購入先に問い合わせてください。
※WEB上に公開されている場合もあります。
SDSの準備ができたら「3.組成及び成分情報」の箇所でCAS:化学物質の固有番号か、物質名で一致する成分があるかを確認します。
そして、含有製品の選別ができたら、次のステップは現在の使用条件下で、濃度基準値以下での運用になっているかの確認です。これには実際の現場で環境測定を行い、実測値から判断する方法がありますが、手間と費用面から考えて、すぐに環境測定をするのではなく、まずは実測値がなくても簡易的に推定して評価できる方法をお勧めします。それが、CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)という厚生労働省が開発した実用的な化学物質のリスクアセスメント用ツールです。
※厚生労働省:職場のあんぜんサイト上に無料で公開。(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07_3.htm)
このクリエイト・シンプルは化学物質の情報と実際の使用条件に関する質問に答えていくだけで、リスクを見積もることが可能で、ばく露濃度の推定値と濃度基準値とを比較できます。このツールはエクセルのマクロ機能を使って、入力されたデータから自動的に評価レポートを生成するので、使用する化学物質のCAS・含有率・使用条件の詳細が分かっている場合には、誰でも評価レポートの作成が可能で、濃度基準値以下での運用になっているかどうかの判断が容易なため、特に前述した9種類については、この評価方法が有効です。
そこで、次号ではこの『クリエイト・シンプル』について、実施方法を中心に取り上げる予定です。対象の濃度基準値と比較できるよう、実際の使用条件を当てはめて、推定のばく露濃度をご確認ください。
⇒次号へ続く














