
~シリーズ:人材を守る~
保護具を考える:皮膚障害等防止用保護具の選定
印刷現場の手の保護対策でハンドクリーナーの運用を取り上げてきました。今回はもう少し範囲を広げて、皮膚等に障害を起こす化学物質の取り扱い時に必要となる『保護具』について、考えていきたいと思います。
2024年4月1日~「新たな化学物質規制」が本格的に始まり、化学物質の運用に関して、従来のように国が特定の化学物質を指定して、それを避ける受動的な管理ではなく、GHSという化学物質の危険有害性に関する国際基準に従って、作業者自身が十分にそれを理解した上で作業する「自律的な管理体制」が求められるようになりました。
それに伴い、作業者の身を守るための保護具に関しても、皮膚等に障害を起こす化学物質の取り扱い時に「不浸透性の保護具」を使用することが義務化されました。
そこで、厚労省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」に沿って、保護具の選定や運用方法について取り上げていきます。
皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(概要)をダウンロード
出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00005.html)
まず、皮膚等障害化学物質とはどのような物質かというと、①皮膚刺激性有害物質:744物質と②皮膚吸収性有害物質:196物質があります。①も②も当てはまる物質:124物質を合わせると1,064物質もあります。 ①と②の違いは、以下のように分類します。
① 局所で影響:皮膚または眼に直接障害(化学熱傷・接触性皮膚炎等)を与える
② 全身に影響:皮膚から吸収・侵入し健康障害(意識障害・発がん等)を起こす
これらの物質を使用する場合、不浸透性の保護具が必要ですが、どんな種類があるかというと、保護衣・保護手袋・履物・保護眼鏡等があり、これらの選定や管理は誰が行うかというと、新たな化学物質規制の取り組みで、選任が必要となった「保護具着用管理責任者」です。※新たな化学物質規制はEn-ForumのNo.73で取り上げています。
では、保護具着用管理責任者はどうやって必要な保護具を選定するかというと、まず初めに現在取り扱っている化学物質が、皮膚等障害化学物質に該当するかどうかを製品のSDS(安全データシート)で確認する必要があります。
手順としては、SDSの「15.適応法令」で労働安全衛生法の箇所に「皮膚等障害化学物質」という記載の有無を確認。
記載がない場合は「2.危険有害性の要約」でGHS分類の区分を確認します。項目としては、健康および環境有害性の箇所に「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」、「呼吸器感作性」、「皮膚感作性」のいずれかが区分1の場合は該当です。※下記の危険有害性を表す絵表示が目印です。
さらに、「3.組成及び成分情報」で成分名を皮膚等障害化学物質リストと照合します。リストはQRコードか、WEBで「皮膚等障害化学物質␣一覧」で検索できます。※灯油、テレピン油、メタノール等、印刷でよく使用される物質も該当します。
該当が確認された場合は、該当する項目に沿って、不浸透性の保護具を選定します。該当品の調査について、ご不明点があればモトヤ担当までお声がけください。
⇒次号へ続く