保護具を考える:皮膚障害等防止用保護具の選定③

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~シリーズ:人材を守る~

保護具を考える:皮膚障害等防止用保護具の選定③

前回は2024年4月からの労働安全衛生法の改正で、皮膚等に障害を及ぼす化学物質の取り扱い時に「不浸透性の保護具」の着用が義務化されたため、特に化学物質が皮膚を通して体内に取り込まれる「経皮吸収」の労働災害事案についてご紹介しました。今回はそのような労働災害事案から、作業者の手を守るための『化学防護手袋』について考えていきます。

まず、一般的な保護用・溶剤用と呼ばれる手袋と「化学防護手袋」は、作業者の手を守るという点では同じですが、化学物質からの防護に特化し、化学物質の浸透・透過を一定時間防ぐ性能と耐久性を兼ね備えているという点では全くの別用途で、日本産業規格:JIS T 8116では以下の基準で試験をして認定しています。

浸透:化学物質が手袋の縫い目や接合部の隙間等から非分子レベル(大きい隙間)で通過すること

性能:耐浸透性

 

 

品質許容水準AQL:%

4.0

2.5

1.5

0.65

クラス


透過:化学物質が手袋の素材を分子レベル(とても小さい隙間)で通過すること

性能:耐透過性

 

 

 

 

平均標準破過点検出時間:分

>10

>30

>60

>120

>240

>480

クラス


劣化:化学物質が手袋に触れて、物理的に変化⇒ゴムの伸び、変色、亀裂が入ること

性能:耐劣化性

 

 

変化率:%

80

60

40

20

クラス


これら三項目の性能・耐久試験を行い、各項目でクラス分けされています。これらを踏まえて化学防護手袋の選定を以下の手順で進めます。

・作業等の確認:取扱物質/作業内容/作業時間
⇒取扱物質が皮膚等障害化学物質に該当か確認。作業内容は化学物質が、誰に、どのような状況で付着する可能性があるかを確認。作業時間は化学物質に触れている時間ではなく、触れる可能性のある作業の開始~終了までを時間として考える。

・耐透過性クラスの確認:作業分類・作業時間から必要なクラスを選定
⇒作業内容・時間を参考に作業分類と必要な耐透過性クラスを確認し、材質の候補を選定。

透過性

クラス

◎:、6

〇:

△:

作業分類

接触面積:大

作業分類

接触面積:小

作業分類

接触しない

作業時間

240分~

/

//

60~240

/

//

//

60

//

//

//

 

・手袋製品の性能確認:規格/材質/耐浸透性/耐透過性の適合確認
⇒JIS T 8116適合品or国際規格:ASTM F 739/EN ISO 374も同等試験の合格品かどうかを確認。材質は作業等から必要な耐透過性クラスに適合した材質か、厚みも併せて確認。耐浸透性能:クラス1~4を確認。耐透過性能:クラス1~6を確認。

そして、この化学防護手袋の選定手順で、最も苦労するのは取扱溶剤の特定とそれに対応できる手袋材質の選定です。その苦労する理由とは「取扱溶剤の種類が多い」「複数成分を混合した製品が多い」「複数の製品を併用する場合が多い」といった印刷業特有の事情があるからです。

これらの理由で手袋材質(ゴム・樹脂)の耐性表と照らし合わせても、耐性があるかないかの判断が難しいという状況になり、一つの材質だけでは対応できないため、どの組み合わせで選定するかという問題が出てきます。

⇒次号へ続く


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