
~シリーズ:成分の把握と応用~
原油と消耗品を考える:中東情勢による影響③
石油の量を表す国際的な単位は、バレル:barrel(樽)が用いられています。これは、米国での油田開発期:1860年代に、現在のドラム缶のような輸送容器がなく、欧州から輸入した酒樽の空容器を再利用していたことに由来します。
そして、この樽の容量は米国単位の50ガロン(1ガロン≒3.785リットル)で、木製のため輸送中の蒸発により輸送後は約42ガロンに目減りしたため、その量を1バレル(約159リットル)にしたそうです。現在もこのバレルで石油の埋蔵量・生産量・消費量等を表し、原油相場でも使われています。
さて、中東情勢について、前回は原油から最終製品までの工程を石油の基礎化学品という成分の視点から見ていきました。今回はその続きで、この中東情勢からの教訓と基本的な対策について考えたいと思います。
そこで、石油資源の大原則として、資源を持つ国から持たざる国へ滞りなく流れていくためには、両国間の友好な関係とその経路に位置する地域社会の安定が必須条件です。日本の石油消費量は世界第7位:336万バレル/日で、国内生産量はたったの7万バレル/日です。
つまり、国内需要の99.7%は輸入に依存しており、いざこの条件が崩れると、すぐに石油の流れが停止⇒全産業へ影響が出ます。※過去に日本はこの石油資源が止まり、戦争への道を歩んだという事を忘れてはいけません。
特にこの印刷業界は石油に大きく依存しており、調達ルート上の有事や国際的な緊張の高まりで、今回のような影響はいつでも起こりうるという事を前提に、事前の準備が必要です。その準備の一つが「備蓄」です。
今回の中東情勢の影響が「ナフサショック」と呼ばれるように、ナフサの不足から発生しましたが、その主要因は、法的な理由:石油備蓄法にナフサが適用されないのと、コスト的な理由:ナフサの長期保存には、高度なレベルの密閉・圧力・温度管理設備が必要で、莫大なコストがかかります。これらの理由で国内のナフサ備蓄量は約20日分しかなく、ホルムズ海峡の封鎖後は約1ヶ月も経たない内にナフサ製品の不足が発生しました。
そこで、一部では「政府備蓄:約200日分の原油からナフサを大量生産すればよい」との意見も出ましたが、原油を蒸留してもナフサ1割:輸送用燃料9割となり、大量の余分な輸送用燃料を長期で貯蔵しておくタンクやスペースが足りません。こうした事から政府見解や経産省の説明にあった通り、ナフサにできる石油の量は十分に確保できているが、供給面で目詰まりが発生していたと考えられます。
つまり、ナフサではなく、最終製品の状態で一定量の在庫を常に確保しておかないと、有事の際には同様の事態が起こります。
また、時々お見かけするのが、消耗品の発注量をなるべく抑えて、納入業者がほぼ毎日急ぎで納品して、ようやく在庫量を維持し、常に在庫不足で回しておられる印刷会社をお見掛けしますが、製造業として直近の生産に必要な原材料の調達ができていないのは、大きなリスクに繋がるという事を今回の教訓としていただきたいです。※消耗品は万が一に備えて、ゆとりを持った在庫量を確保する「備蓄」の対策をお勧めします。
⇒次号へ続く














