
~シリーズ:成分の把握と応用~
原油と消耗品を考える:中東情勢による影響②
前回は中東情勢による印刷業界への影響について取り上げました。今回は石油製品について、各消耗品の成分や原料の観点から全体の流れを考えたいと思います。
そこで、原油から最終製品までの流れを見ると、まず日本の原油調達の約95%は中東諸国からの輸入で、通常であればその原油は、蒸留によって各用途(ガソリン・軽油・灯油・重油等)の沸点ごとに振り分けられて、90%以上は輸送用燃料として消費されます。この蒸留の際に出る輸送用燃料以外の余った成分が「ナフサ」です。
つまり、このナフサを精製する石油化学工業の歴史は、自動車の普及とともにガソリンや軽油等の燃料を大量生産する中で、副産物として出てくるゴミを有効活用するために発展していきました。
そのナフサは分留の工程で、サラサラの軽質ナフサとドロドロの重質ナフサに分けられ、次の脱硫・精製の工程で、有害物質(有機硫黄・有機窒素化合物)や、微細な金属などの不純物を水素と触媒を用いて分解・除去します。※洗浄剤の成分で「水素化精製重質ナフサ」という表記は、この脱硫・精製後のナフサです。
そして、脱硫後のナフサを石油化学プラントで、高熱分解により「エチレン」「プロピレン」「ブタジエン」を取り出し、触媒改質で「ベンゼン」「トルエン」「キシレン」を生成します。これら6つの成分を石油の「基礎化学品」と呼びます。
この基礎化学品は重合や組み合わせによって、様々な石油化学製品に分岐するため、この出発点から見ていくと、今回の中東情勢の影響が段階的に広がった経緯が分かりやすいです。
例えば、ホルムズ海峡の封鎖から約1ヶ月で、最初に「トルエン」が供給停止となり、一時は通常価格の約5~10倍まで高騰しました。このトルエンは塗料の希釈剤(シンナー類)で、大量に消費されますが、基礎化学品の中では最も重く製造割合も少ないため、最短で供給が停止しました。
そして、第2段階は基礎化学品:エチレンの重合品であるポリエチレン:ストレッチフィルムやプロピレンの重合品:PPバンドが出荷制限となり、短期間で複数回の価格改定が実施されました。
それらと同時期に、プロピレンと反応させて製造するアルコール(IPA・NPA)も、生産量の低下で供給不安となり、さらにIPAは医薬品+半導体製造業界で約50%、NPAは塗料+医薬品業界で約70%以上も消費されるため、供給不安から買い込み等も同時に発生し、特に印刷業界への割り当ては厳しい状況となりました。
第3段階は、製品の一部に基礎化学品が含まれる物で、酢酸ビニル(エチレンの反応で製造)を原料とするホットメルトや糊、ボンド、接着剤等が供給不安となり、さらにそれらを原料の一部とするテープ、ラミネート、インクジェットメディア等も順に供給制限がかかりました。
また、この段階になると紙のコーティング剤や助剤の不足で、塗工紙の供給が停止、自治体指定のゴミ袋の売り切れ等、あらゆる石油製品に影響が広がっていきました。
⇒次号へ続く













