環境法令を考える:労働安全衛生法①

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~シリーズ:法令の把握と遵守~

環境法令を考える:労働安全衛生法①

侍ジャパンが3大会ぶりに王座を奪還し、日本野球の選手層の厚さと一体感が際立ったWBC:ワールド・ベースボール・クラシック2023は、大盛況のまま幕を閉じました。普段野球を観ない方でも、準決勝(メキシコ戦)での村上選手のサヨナラ二塁打や決勝(アメリカ戦)での大谷選手VSマイク・トラウト選手に感動し、目が離せなかったのではないでしょうか。今後も2023年は間違いなくWBCが記憶に残り、各名シーンが何度も振り返られるでしょう。


さて、そんな2023年ですが、環境法令でも大きな転換期となります。それは、2023年と2024年の二段階で『労安法:労働安全衛生法』が改正され「新たな化学物質規制」がスタートします。そこで今回からこの労安法をテーマに取り上げていきます。

労安法は、有機溶剤等で関係する有機則:有機溶剤中毒予防規則を含んでおり、職場における労働者の安全、健康の確保、快適な職場環境の形成を目的にした法律です。今度の改正では、法令遵守のみをすればよいという受動的な考え方から「リスクアセスメント:危険性や有害性の評価」によって、有害な化学物質をリスク評価し、必要に応じて自主的に回避・軽減する考え方が明記されています。

 では、労安法と有機則を歴史からみてみると、1911年(明治44年)に日本で最初の労働者保護法である「工場法」が制定、1947年(昭和22年)には「労働基準法」へ統合、その後の高度経済成長期に多発した労働災害への対応で、1972年(昭和47年)に「労働安全衛生法」として成立しました。この間の労働災害で有名なのが、ベンゼンゴム糊中毒の事案で「ヘップサンダル事件」です。

 これは、オードリー・ヘップバーンの出世作「ローマの休日」がきっかけで、当時ヘップバーンが履いていたビニール製のサンダル(ヘップサンダル)が大流行し、その製造の多くが家内工業や内職で、ベンゼンを含有した接着剤(ゴム糊)が使用されていました。ベンゼンは呼吸器系、中枢神経系、造血系に障害と遺伝性疾患、発がん性もあります。

1958年(昭和33年)に大阪でベンゼン中毒による死者3名が確認され、翌年には東京でも死者が出て一気に社会問題となり、ベンゼンゴム糊は使用が禁止されました。そうした背景から制定されたのが1960年(昭和35年)の有機則(有機溶剤中毒予防規則)です。

そして、近年では2012年(平成24年)に印刷業界で起こった「胆管がん問題」があります。この事案の経緯については、中災防:中央労働災害防止協会発行の『胆管がん問題!それから会社は・・・』に詳細があります。


当時ブランケットの洗浄に塩素系溶剤「DCM:ジクロロメタン」が使用されており、有機則:第二種⇒非該当の「DCP:1、2ジクロロプロパン」への切り替えで、規制対象外=安全だと思って使い続けた結果、悲惨な事故は起こりました。これをきっかけに労安法は改正され、2016(平成28年)に「化学物質のリスクアセスメント」が義務化されましたが、実施されている先は少ないです。

このように多数の犠牲者が出る度に法改正が繰り返され、規制物質の増加で対応してきました。しかし、化学物質が原因での労働災害は未だに年間約450件も起こっており、その約8割が法規制対象物質以外のものです。「規制対象外の物質=安全」という認識を改める時期に来ています。

大事なのは、化学物質を扱う作業者自身が危険性を考えて回避しない限り、労働災害はなくならないのではないでしょうか。




参考資料:厚生労働省


⇒次号へ続く






 

 




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