環境法令を考える:PRTR法①(2023/4/1~改正PRTR法)

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~シリーズ:法令の把握と遵守~

環境法令を考える:PRTR法①(2023/4/1~改正PRTR法)

今年は環境法令の一つ『PRTR法』が改正され、2023年4/1~施行となります。この法令は溶剤などの製品カタログやチラシで「有機則」や「消防法」とセットでよく記載されていますが、実際にはどういった法令なのか不明な方も多いと思います。そこで、今回からこのPRTR法をテーマに取り上げたいと思います。

まず、PRTR法は正式には「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」という、とても長くて覚えにくい名称のため、略称が使われます。略称には「化管法」や「化学物質排出把握管理促進法」といった漢字表記と、この法令の意味であるPollutant(環境汚染物質)Release(排出)Transfer(移動)Register(登録)の頭文字を取った『PRTR法』がよく使われます。
この法令は有害性が疑われる化学物質が、1年間でどこからどの程度環境へ排出されたかを社会全体で管理(集計)して、見える化(公表)するために作られました。 国は届出があったデータを集計してWEB上で公表しています。管轄する省庁は「経済産業省」と「環境省」の二つです。※届出はWEB上で行えるようになっています


PRTR法の対象となる条件は、①業種、②従業員数、③指定化学物質の年間取扱量の3つです。①は24業種あり、印刷関連は3.製造業:h.出版/印刷/同関連産業(業種コード1900)です。②は常時使用する従業員数が21名以上です。※20名以下は対象外。③は有害性が懸念される第一種指定化学物質の合計取扱量が年間に1トン以上で対象です。
集計期間は4/1~3/31で、1トンを超える場合は6月末までに届出が必要で、第一種指定化学物質は1%以上含有すると該当製品として扱われます。定期的に購入している消耗品が第一種指定化学物質に該当しているかどうかは、製品の安全データシート(SDS)15.適用法令の箇所で確認ができます。今回のPRTR法改正で、この第一種指定化学物質が現在の462物質から515物質に追加されるので、従来は関係のなかった製品も対象となる可能性があり、新たにSDSを取得して確認する必要があります。

では、③の条件から1トン/年以上も取り扱わないと思われる事業所では、この法令は全く関係がないかと言うと、そうではありません。なぜなら、1トン/年を超えるか超えないかは該当するすべての製品の年間取扱量を合算して、実際に計算してみないと分からないため、該当製品が増えるごとに管理や数量を把握するための手間と労力がかかります。※この法令は特定化学物質の管理と把握に重きを置いています
しかも、経済産業省と環境省の管轄する法令のため、各種環境や管理の認証制度でもPRTR法の該当品は制限を受ける可能性があります。例:GP認証ではPRTR該当品は☆☆☆を取得できない等


また、今回の改正で溶剤価格にも影響が出ています。PRTR法に入ると、その物質を年間1トン以上使用している大口のユーザーが、PRTR法に該当しない代替溶剤へと切り替える動きになり、生産量・流通量が大幅に落ちることで、溶剤の市場価格が一気に上昇します。
そして、今回の改定では印刷業でもよく使用されている物質が何種類も入るため、特にインキ洗浄剤・水棒洗浄剤・H液・ブランケット回復液等で含まれる物質は、現在の石油や輸送費高騰による溶剤価格の上昇とは別に、改正PRTR法に伴う溶剤の急激な値上がりが始まっています。また、改正によって指定物質を含む製品の廃盤や成分変更も相次いで行われ、各メーカーの溶剤ラインナップは大きく変わっていくことになります。
PRTR法について
PRTR法の改正


⇒次回に続く



 

 




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