基本を考える:ブランケット④

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~シリーズ:品質を維持する~

基本を考える:ブランケット④

仕立てとは「目的に合わせて作り上げること」を指します。仕立ての良い服というのは、着る人の用途に適した生地の選択・裁断・縫製を経て、仕立てが良くなる工夫がされています。印刷にも「胴仕立て」という言葉があります。これは印刷品質の維持にとって重要な「圧」を作り上げることを指します。今回はブランケットの「胴仕立て」についてです。

胴仕立てとは、印刷で適正な圧を得るために3つの胴⇒P:版胴/B:ブラン胴/I:圧胴の各胴間隔による圧が適正になるよう調整する作業です。同じブランケットでも、印刷品質が毎回違うように感じるのは、実は製品のブレよりも、この胴仕立てに問題がある場合が多いです。

まず、3つの胴はP:版胴が版と版下フィルム、B:ブラン胴がブランケットと複数枚のブラン下(胴張用紙やアンダーブラン)を装着します。I:圧胴は何も装着せず、入力された紙厚分だけ隙間が空いた状態で圧がかかります。印刷の圧にはP/B間:版圧とB/I間:印圧があります。

版圧の調整はシリンダーの両端にある、ベアラ(胴枕)という基準軸で、この高さにブランケットを合わせます。このベアラ同士が接触して均一な圧で回転することを「ベアラコンタクト」と言います。版圧は突き出た版の圧(0.10㎜)をブランケットに食い込ませてインキを転写しています。一方、印圧は入力された紙厚分だけベアラ間に隙間を空けて、圧胴面のベアラより高い分(オーバーベアラー分)が紙を押し上げる力(圧)になって、ブランケットに紙を押し込むことでインキを受け渡します。

これらの構造から、ブランケットは紙にインキを押し付けるものではなく、PとI両方からの圧を受け止める緩衝材のような役割を担っています。したがって、着肉を良くする目的でブランケットを過剰に高くすると、この役割が機能せず、版圧と印圧の両方から過剰に圧が掛かり、以下のように様々なデメリットと引き換えになるので、要注意です。
デメリット:耐刷不良・紙跡が多発・網点の異常・見当不良・紙ムケ・ショック目

そして、もう一つの注意点はブランケットの厚み変化です。

厚みの変化には「装着ヘタリ」と「使用ヘタリ」があり、装着ヘタリは装着時に布地とゴムが引っ張られて、胴に馴染んで少し薄く(0.02~0.05㎜)なるヘタリです。この時に一気に締めてブランケットの圧縮層が壊れないよう、必ずトルクレンチ(機械の推奨トルク値)で締めて下さい。

このヘタリで交換後1~3万枚通した時点で、緩みが出てくるため、緩んだ分を締め直す増し締めが必要です。※この緩みが出ない場合は装着時に締め過ぎです。ブランケットは、この装着時のヘタリを考慮して厚めに製造(実寸:1.95㎜以上⇒装着時:1.90㎜で計算)されています。

一方、使用ヘタリは印刷中に徐々に布やゴムが伸びて、薄く(0.03~0.07㎜)なっていくヘタリです。このヘタリで厚み不足による着肉不良が起こる場合は、ブラン下の胴張用紙で調整するか、ブランケットの交換が必要となります。この胴張用紙は胴仕立て専用の圧縮紙を使用し、できるだけ1~2枚ではなく3~5枚程で圧を分散&微調整が可能な状態にします。

つまり、胴仕立ての適正な圧というのはブランケット(1.90㎜で計算)+胴張用紙を複数枚使用して、機械ごとに決められた厚みに設定⇒ベアラからの凸量を0~0.05㎜に作り上げることです。



⇒次回に続く


 

 




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