基本を考える:インキ添加剤(乾燥促進剤)

HOME > メディア > En-Forum > 基本を考える:インキ添加剤(乾燥促進剤)
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

~シリーズ:生産性を高める~

基本を考える:インキ添加剤(乾燥促進剤)

1~2月にかけては1年で最も気温が下がります。ウイルスが活発になるこの時期に感染予防対策は重要ですが、寒さと乾燥への対策も必要です。現場では空調を利かせても、なかなか朝一番の仕事で印刷機械が温まらずに、インキ乗りが悪い/乾燥に時間がかかる等を感じておられることもあると思います。

そこで、今回は 第45回 基本を考える:インキ(乾燥)のおさらいとインキ添加剤の続きとして『乾燥促進剤』について考えたいと思います。

気温と乾燥時間の図
インキの乾燥には「セット:浸透乾燥」と「乾燥:酸化重合」の二段階があります。セットはインキ中の溶剤成分が紙に浸透、ワックス成分が表面に残り、ベタつきを抑えて紙と紙の接着を防ぎます。乾燥は浸透したインキが毛細血管のように紙の繊維まで広く延ばされて、インキ中の植物油(乾性油)が酸素と重合して硬化します。
セットと乾燥への対応
これらの工程でセットに問題があると裏移りやブロッキング/乾燥に問題があると後加工トラブルが発生します。気温が下がると、両方とも時間が倍増するため、寒い日は特に要注意です。それぞれを補う添加剤はセット⇒裏移り防止剤でワックス成分を増強するものと乾燥⇒ドライヤーでインキの酸化を促進するものがあります。

セットに関しては、インキのセット性能/パウダーの粒径/紙質等が大きく影響するため、インキ添加剤で増強できるのはワックス成分やスターチ(でんぷん成分:パウダーの役割)で「裏移り防止剤」や「被膜強化剤」という名称です。

一方、乾燥を早めるドライヤー(酸化促進剤)は以下のような3種類あり、状況によって使い分けます。
①インキ添加剤:金属塩型/②インキ添加剤:酸素発生型/③湿し水添加型
ドライヤーの種類について
①は最も一般的なドライヤーです。酸化剤の金属塩(コバルトやマンガン)をペースト状にして、インキに5%未満で添加します。単価が安く(約¥2500/㎏)インキに混ぜやすいので広く使われていますが、機上安定性が悪い(皮張りしやすい)です。また、対応できない紙として、非吸収紙と呼ばれる合成紙や再生紙、マット紙等があります。

①は石油系溶剤を含むため、合成紙の場合は浸透せず紙面も膨潤するため添加できません。通気性の悪い再生紙やマット系も酸化促進が効きにくくなります。さらに酸化剤の「コバルト」は発がん性物質として、人体に悪影響を及ぼし、産地も限られるレアアースのため、欧州を中心により有害性の少ないマンガンや非コバルトドライヤーへの切り替えが進んでいます。

そういった問題にも対応するのが②の酸素発生型です。これは金属塩ではなく、「過酸化物」をインキに添加し、湿し水の水分と反応して酸素が発生⇒酸化促進が行われます。環境法令対策(PRTR非該当)にもなりますが、価格面では約¥10,000/㎏で6ヶ月以内に使い切りを推奨なので割高となります。

③は湿し水添加型です。これはインキではなく、湿し水に添加してコバルト化合物が印刷の際にインキ中に入り、酸化を促進します。印刷したインキにのみ酸化促進するので、機上安定性とコストパフォーマンス(¥3500/500ml:湿し水100L⇒200ml~500ml添加)が抜群に良く、非吸収紙にも使用実績があります。良いことばかりですが、コバルト化合物のため環境法令対策は×です。※PRTR法に該当

使用する紙や状況で選定は変わりますが、①~③の特徴を踏まえて、いざという時には乾燥促進剤も有効活用していただけたらと思います。


⇒次回に続く


 

 




別のEn-Forumを読む
環境改善のご案内や業界ニュースをお届け
環境に優しいモトヤの印刷資材

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

 

 

Copyright © 2009 MOTOYA All Rights Reserved.