基本を考える:インキ(高感度UV①)

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~シリーズ:トラブルを防ぐ~

基本を考える:インキ(高感度UV①)

毎年、春先から飛び始める花粉で、くしゃみ・鼻水・目のかゆみに苦しむ人々がいます。アレルギー症状の花粉症は、春の陽気が憂鬱になります。花粉への感度が無駄に高いせいか筆者もその一人で、30年以上も苦しむベテランの患者です。根本的な治療は難しいですが、最近では特徴も分かってきたので、早めに耳鼻科に行って発症前に軽度の薬を服用⇒発症前から抑える対策で、少しは上手に付き合えています。※発症後はどの薬もあまり効きません。

このように事前に特徴を知って、対策をしておくことで大きなトラブルを抑えるというのは印刷でもあります。今回はUV印刷の中でも特に増加している「高感度UV」の特徴について取り上げたいと思います。


花粉症の図
UV印刷は紫外線の照射により瞬間硬化するため、短納期・乾燥トラブル低減・VOC削減といったメリットがあります。原理は液体の樹脂(モノマー)に溶け込んだ光重合開始剤(光増感剤)がUV光に反応してモノマーを硬化させます。

UVによる硬化の仕組み


紫外線の波長は100㎚~400㎚ですが、UV印刷のランプでは200㎚~500㎚が使用されます。この200㎚付近の短波長域で「オゾン」が発生⇒強酸性で人体に有害+機械類の錆びが懸念されます。また、500㎚付近の長波長域では「熱」が発生するので、対策として排気/排熱のダクト設備が必要になります。

こうしたUV印刷の形式は30年以上も前から同じでしたが、UVランプ照射にかかる消費電力が油性印刷機約1台分に相当することから、省電力・環境対応・ダクト設備レスの要望を受けて、2008年にリョービ㈱・東洋インキ製造㈱・パナソニック電工㈱の共同開発で、LED光源を利用した「LED-UV乾燥システム」が誕生しました。この方式は光源をLEDにすることで、従来型ランプ形式で課題だった多くの点を克服しました。

・LEDが単一波長域で、オゾン/熱の発生がなくダクト設備が不要
・瞬時に点灯/消灯が可能で、ジョブ間での待機時間がない
・光源寿命が約15倍
・消費電力が従来の約1/10
・発熱が無く、用紙が伸縮しない(熱に弱い原反も可能)

こうした低出力のUV光源を1灯で硬化させるために、従来型UVインキの感度を高める必要があり、光重合開始剤の種類や量を増やしたのが『高感度UVインキ』です。この開発を機に省電力UV光源&高感度UVインキという新たなUV印刷の形が生まれました。

UVに印刷の種類
そして、2009年には㈱小森コーポレーションから、従来型UVランプ(オゾン/熱発生域をカット)&最新型LED用高感度UVインキの混成型という意味でハイブリット型UVとして「H-UV」が発売されました。この方式は当時のLED-UVでまだ懸念があった以下の二点を解消できたため、導入が進みました。

・初期導入費用が高い
・低出力で照射距離が近い⇒厚紙に向かない
   
この頃からLED-UV・H-UV・ECO-UV・減灯UVなど、様々な「省電力UV」と各光源に対応するインキが枝分かれしていき混乱しましたが、現在では『高感度UVインキ』として、紙用と高密着用(PP/PET等)のどちらかに統一されてきています。

注意点として高感度UVインキを従来型光源(胴数分の高出力ランプ)に通すと、乾燥は申し分ないのですが、被膜が強固になり過ぎて脱墨性(リサイクル性)が悪くなるので、インキ工業会では適正な光源での使用を推奨しています。

高感度UVインキの使用について
また、最近ではLED光源が高出力タイプに進化して、厚紙対応や照射距離が離せるようになりました。さらに長寿命化で既存の油性印刷機にLED光源を後付けしてLED-UV化するリノベーションの動きも活発になってきています。




⇒次回に続く


 

 




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