基本を考える:インキ(成分と役割)

HOME > メディア > En-Forum > 基本を考える:インキ(成分と役割)
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

~シリーズ:品質を維持する~

基本を考える:インキ(成分と役割)

インキメーカー各社がオフセット用インキの価格改定を発表しました。改定理由は以下のような内容です。

・主原料(顔料、樹脂、溶剤、UV硬化剤)の高騰
・環境対応へのコストが増加
・容器、物流コストの増加
・需要の大幅減による製造コストの増加

インキ価格改定原因のイメージ図
今回の改定幅は各社1kg当たり油性:50~100円/UV:100~150円です。この機会にインキの変更を検討されるかもしれませんが、オフセットインキは「ファインケミカル」と呼ばれるように、高度な技術と機能性が付与された化学工業製品です。特徴を理解した上で選定し、適切に運用しないとコスト削減分以上にリスクを背負うことになるので注意が必要です。そこで今回は、品質の維持に大きな影響を及ぼすインキについて取り上げたいと思います。

オフセット用インキは以下のように乾燥方式で分類します。
・酸化重合:油性枚葉機
 溶剤が紙に浸透し、残りの乾性油(植物油)が酸素と反応して数時間かけて乾燥。
・光重合:UV印刷
 合成樹脂と光重合開始剤により、UVランプの紫外線に反応して瞬時に乾燥。
・熱重合:油性輪転機
 印刷直後の熱乾燥装置で溶剤を蒸発させて瞬時に乾燥。
・浸透乾燥:新聞輪転機
 インキ中の低粘度成分が新聞用紙に浸透して乾燥。

インキの乾燥方式

さらに用途によって、以下のように分かれます。
・プロセス:墨・藍・紅・黄のカラー印刷用
・中間色:金赤・紺藍・草など単色印刷や混ぜ合わせて作る特色用
・メジューム:透明白色顔料の濃度調整用
・OP(オーバープリント)ニス:コーティングして光沢・マット感/表面保護/退色防止
・金銀:金(真鍮)と銀(アルミ)の金属系顔料で高級感を付与
・白:酸化チタンが顔料で、色インキの透過防止や色紙への白色表現用
・その他:合成紙用/蛍光/耐候性/減感などの特殊用途

そして、インキは色を出す「顔料」とそれを分散して運ぶ「ビヒクル(展色剤)」に「助剤」を加えて製造されますが、その『成分と役割』の理解がインキの特徴・補助剤の選定・運用方法に関わるため、とても重要です。※ページ下部:成分の図解を参照

そこで中身を見ると、ビヒクルはワニスと希釈剤に分かれます。ワニスは水飴のような形態で、油性はロジンという松脂(天然樹脂)を加工し、顔料の分散/光沢付与/乳化調整という主要な役割を担っています。被膜形成には酸素で硬化する乾性油(植物油)を使用し、高沸点の石油で希釈して粘度を調整します。

UVはこれらを接着剤のような粘着性の高い合成樹脂(ポリマー・モノマー)で行うため、光沢不足・タック(粘り気)が強い・網点が太るといった特徴が出てしまい、油性とUVで色の再現性が変わる⇒品質の差異を引き起こします。

また、「助剤」としてワックスで耐磨性を付与し、界面活性剤で乳化やレベリング(平滑性)を調整しますが、油性とUVで違うのは乾燥を促す成分と役割です。油性では酸化重合を促進する金属ドライヤーを使用し、UVでは紫外線の硬化を開始するための光重合開始剤を使用します。

この違いにより開始剤がゴムの膨潤・タックの上昇・湿し水のpH上昇に繋がり、ブランケットの低寿命/紙剥け/逆トラッピング/絡み汚れといったUV特有のトラブルを誘発します。

このようにインキは種類によって、大きく印刷適正が変わりますが、油性⇒性能が良い:UV⇒性能が悪いではなく各成分と役割の違いを理解して、どういった成分がその特徴を生み出しているかを考えて、適切に対応することが品質の安定に繋がります。

インキの成分と役割

インキの成分と役割2


⇒次回に続く


 

 




別のEn-Forumを読む
環境改善のご案内や業界ニュースをお届け
環境に優しいモトヤの印刷資材

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

 

 

Copyright © 2009 MOTOYA All Rights Reserved.