基本を考える④:湿し水(温度)

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~シリーズ:品質を維持する~

基本を考える④:湿し水(温度)

メダルラッシュとなった「東京オリンピック・パラリンピック2020」が閉幕しました。史上初の延期やコロナ禍での開催に賛否はありましたが、連日の猛暑の中、素晴らしいパフォーマンスを発揮したすべての選手と関係者に敬意を表したいと思います。
さて暑さも落ち着きましたが、今回も「湿し水」をテーマに温度との関係について考えたいと思います。

人間が快適な温度は夏場25~28℃/冬場18~22℃だと言われています。職場の温度/湿度は事務所:事務所衛生基準規則や工場:労働安全衛生規則で、一定の範囲内に維持する努力義務があります。これは、人間が気温や湿度に影響を受けるからで、特に代謝により一定に保たれている基礎体温は、微妙な変化でも体調に影響するため、私たちは体調不良を感じたら、まず体温を計ってその後の対処を考えます。

印刷でも同様に温湿度の最適環境があり、JAGAT(日本印刷技術協会)では25±2℃/湿度55±5%の維持を推奨しています。これは人ではなく、紙やインキにとっての最適です。その中でも品質を左右する印刷の基礎体温となるのが湿し水の冷却温度です。体温と同じく±2℃程度の変化でも大きな影響を受けるので、とても重要ですが現場では『水温⇒印刷への影響』について、あまり理解がないまま運用されています。

印刷に最適な室内温度
そこでまず知っていただきたいのは『水温と粘度⇒給水量』についてです。JIS規格で水温と粘度の相関関係から、水温20℃/粘度:1.00⇒0℃/粘度:1.79となり、冷やすと粘度が上昇⇒給水量が増加します。これは水に粘りが出て、給水ローラが1回転で運ぶ量が増えるからです。粘りが出るのは水を0℃以下にすると氷に固まるイメージです。
つまり、水温が低過ぎ・粘度過剰⇒過剰乳化/水温が高過ぎ・粘度不足⇒地汚れとなり、水温が給水量に直結するため、一定に管理する必要があるのです。

水温の一定管理が必要
それらを踏まえると、まず出発点の①湿し水循環冷却装置で水温設定(10℃前後)⇒②配管⇒③給水部(水舟)~給水ローラ⇒④版面の順に運ばれて、徐々に温度が上昇し、最終④が28±2℃の範囲で運用できると理想的です。しかし、室温や稼働状況で適温より高くなる場合もあります。この過剰な熱を冷やす機構がローラ冷却装置で④より少し低い設定が目安です。

そして、版面の適温(28±2℃)を維持するために、版面温度を正確に把握したいのですが、印刷中の版面温度は非接触の放射温度計(赤外線)でしか計測できず、誤差±2℃もあるので参考程度です。そこで重要なのは、直接湿し水を計測できる調理用温度計を用意し、①と③を同じ温度計で計測することです。※調理用温度計:誤差±1℃程度(1,000~2,000円程度)

この①と③を比較するのは①⇒③の温度上昇が、機械や季節により変わるためです。(例:1号機①10℃設定⇒③10.2℃/2号機①10℃設定⇒③13℃)このような温度差を機械ごとに把握して、③を13±2℃(目安)の範囲になるよう①を調整してください。
※③は片側から入り逆側へ抜けて①に戻る構造のため、左右の温度差にも注意が必要

こうした温度管理に正解はありませんが、印刷物が汚れないように意識し過ぎて、給水量を確保するため③の温度が極端に低い先が多いです。水温が低い⇒インキが冷えて着肉が悪くなり、紙剥けが多発する場合は、インキやブランケットだけではなく、この水温の見直しが必要です。体調管理と共に水温管理もしっかりと行い、安定した品質を維持していただきたいです。

水温設定と粘度:給水量の関係

湿し水の冷却温度について


⇒次回に続く


 

 




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